『赤い靴デジタルリマスター・エディション』

『黒水仙』と並ぶマイケル・パウエル/エメリック・プレスバーカー監督、ジャック・カーディフ撮影の色彩美あふれる1948年製作の名作バレエ映画のデジタルレストア版。残念ながら日本ではフィルムではなくデジタル上映のみ。それでも充分に見応えのある修復作業にただただ感嘆する。製作から半世紀以上経った今でもその魅力は色褪せるこがないどころか、むしろその輝きは増しているように感じる。このデジタル技術全盛の今となっては逆に作ることさえできないであろう当時のアナログな技術と工夫とに底上げされた「物語」というロマンティシズムに満ちた作品。この作品で描かれる、舞台、芸術、物語などといった虚構の世界に取り憑かれたバレエ団の主宰レルモントフの執着と狂気にゾクゾクする。
この修復作業は2006年から行われ2009年のカンヌ国際映画祭で初披露されたそうで、日本で観ることができるまでに少しタイムラグがあったが、それでもこうして公開され鑑賞できたことには素直に嬉しく思う。
なお今回の修復コンサルタントとしてマーティン・スコセッシの名前がクレジットされている。スコセッシにとって幼少時に観たマイケル・パウエル作品には強い思い入れがあるようで、1978年にマイケル・パウエル監督作『血を吸うカメラ』のニュープリント再上映にも出資しており、ポスターとプリントに「マーティン・スコセッシ提供」のクレジットも入っているとのこと。フィルムアート社から刊行されている『スコセッシ・オン・スコセッシ』によると「提供者の栄誉と、自分自身に一本三十五ミリのプリントが欲しかったからだ」とある。

原題「The Red Shoes」
監督：マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーカー
出演：モイラ・シアラー/アントン・ウォルブルック/マリウス・ゴーリング/ロバート・ヘルプマン/レオニード・マシーン
配給：デイライト/コミュニティシネマセンター
1948年/イギリス/136分/カラー/スタンダード/モノラル/日本語字幕：古田由紀子/デジタル上映
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公式サイト　http://www.red-shoes.jpn.com/