『パリより愛をこめて』

ピエール・モレルによる『96時間』に続く監督2作目。リュック・ベッソン原案、ヨーロッパ・コープ製作と聞くとどうしても、CG不要の体当たりおバカ・アクション映画を想像してしまう。けれども本作品は比較的真っ当なアクション映画であり、正直かなり楽しく観てしまいました。


5月15日 公開
原題「FROM PARIS WITH LOVE」
監督:ピエール・モレル
出演:ジョン・トラボルタ/ジョナサン・リース・マイヤーズ/カシア・スムトゥニアク/リチャード・ダーデン

【ストーリー】
謎の犯罪組織に、立ち向かうことになった一人の男。彼の名は、ジェームズ・リース。表の顔はパリのエリート米大使館員、裏の顔はCIAの見習い捜査官だ。ようやく与えられた重大任務に張り切るリースを待っていたのは、任務を全うするためには手段を選ばない危険すぎる相棒、ワックスだった−。チェスの名人で数カ国語を駆使する知性派だが、繊細な性格で人を撃ったことがないリースと、推理力も腕力も超一流だが、口より先に銃が出るワックス。生き方も考え方も正反対の二人が、犯罪組織のアジトを捜して、パリ中を駆け巡る。組織は麻薬密売を資金に爆弾を入手、世界崩壊を目論むテロ集団だった。しかし、全貌解明にあと一歩と迫った時、予想もしなかった事実が発覚する。リースの機密情報が組織に流され、彼は命を狙われていたのだった。裏切り者は誰なのか? やがて爆破ターゲットは国際サミットに参加するアメリカ要人だと判明、二人は会場へと走るのだが−。

配給:ワーナー・ブラザース映画
2010年/フランス/95分/シネマスコープ/ドルビーSRD-EX+DTS-EX+SDDS
(C)2009 EUROPACORP - M6 FILMS - GRIVE PRODUCTIONS - APIPOULAI PROD. All Rights Reserved.

公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/frompariswithlove/

作品全体としては、どこにでもありそうなアクション映画で、随所に設けられた伏線もきちんと回収してくれますし、アクションシーンも過度のバイオレンス描写がなくて楽しめます。理屈でストーリーを解析してゆけば辻褄の合わない部分もあるのかもしれないが、そこはヨーロッパ・コープ作品という時点で最初から理詰めされたストーリー展開なんて期待していません。また95分という上映時間の短さも良いです。
そして何よりもジョン・トラボルタの好演が楽しい。アメリカから送り込まれてきたCIA特別捜査官を演じるトラボルタ、一見ブルース・ウィリスと見間違うような禿頭にヤギ髭という容姿で問答無用に暴れまくります。トラボルタが登場してからはアクションに次ぐアクションの連続で、ちょっと小休止のようなシーンになったかなと思っていると、そのまま次のアクションへなだれ込んでゆく。トラボルタ演じるワックスは終始一貫したキャラクターとして描かれており、劇中で「成長」してゆくことはありませんが、理解不能で強引なだけの存在から物語の進行にしたがい人間味が垣間見えてくるようになります。一方、ジョナサン・リース・マイヤーズ演じる見習いCIA捜査官ジェームズは、ワックスに振り回されながらもタフに成長させられてゆきます。この辺の構図も定石どおりで安心して楽しむことができる要因でしょう。
そして本作品のもうひとつの楽しみは、本編中に登場する映画小ネタ。そもそもタイトルからして『007』ですから。このウィット感はジョン・トラボルタだからこそ似合うのでしょう。これがもしブルース・ウィリスだったら、ちょっと違う印象になってしまうと思われます。
冒頭にも書いたように本作品は、リュック・ペッソン/ヨーロッパ・コープの代表作といえる『TAXI』シリーズや『トランスポーター』シリーズのような、ある種ムチャクチャな悪ノリ・アクションではありません。正統派といっても良い、正しいアクション映画なので、年齢性別を問わず楽しむことができる作品だと思います。

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