『スター・トレック イントゥ・ダークネス』

J.J.エイブラムスによるリブート版スター・トレックの第2弾。ノンストップと言ってよいだろう物語展開の連続が楽しく、良い意味で“普通に”面白かった。
前置き。これまで「スター・トレック」シリーズは意図的に避けていた。劇場版もテレビシリーズも作品数が多い上に物語情報も膨大で、手を出すには正直面倒だった。ストーリーも知らず宇宙モノであること以外にどんな世界設定なのかさえ知らずにいた。なので今回『〜イントゥ・ダークネス』を機に前作だけでも鑑賞しておいて良かった。何の前知識もなしに『〜イントゥ・ダークネス』を観ても登場人物情報がなさすぎてストーリーを追えなかったと思われる。ベネディクト・カンバーバッチ目当てで観る場合も予習は必須です。
そんな『〜イントゥ・ダークネス』だが、前作のプリクエル的ストーリーから転じて、物語は冒頭からすでにジェットコースター状態。タイトル前のエピソードだけでもお腹いっぱいになるのに、そこから始まる本編も内容盛りだくさんで、終映後には放心状態になるほどの心地よい疲労感を覚える。もちろんエピソードが盛りだくさんであるがゆえの疑問点はいくつかあるが、これだけ楽しませてくれれば大満足だろう。
なにはともあれ、今作で物語のキーパーソンとなるベネディクト・カンバーバッチの艶に魅せられ、ストーリーも映画全体の印象もカンバーバッチの存在に終始する。彼の演じるジョン・ハリソンについては詳細に触れることはできないけれど、きっと「スター・トレック」シリーズを見続けてきたファンにも納得の敵役となるのだろう。もちろんエンタープライズ号のクルーにもそれぞれに物語が用意されている。それも余興的な単発エピソードではなく、きちんと物語展開に組み込んで配置されていて、盛りだくさんながらも物語のスピードを緩めない。このあたりの手腕には感服するし、考えられた構成は観客の満足度にも反映される。
先述したように、息つく間もない急展開続きの物語と観客サービスを、手練手管のストーリーテリングによってこれだけ魅了させてくれるならば、エンターテイメントとして充分だし文句もない。
蛇足ながら、それでもどうしても気になってしまったのは、冒頭エピソードの放置と動力源となる核エンジンの存在。


8月23日 公開
原題:STAR TREK INTO DARKNESS
監督:J.J.エイブラムス
出演:ジョン・チョウ/ベネディクト・カンバーバッチ/アリス・イヴ/ブルース・グリーンウッド/サイモン・ペッグ/クリス・パイン/ゾーイ・サルダナ/ザッカリー・クイント/カール・アーバン/ピーター・ウェラー/アントン・イェルチン
脚本:アレックス・カーツマン/ロベルト・オーチー/デイモン・リンデロフ 撮影監督:ダン・ミンデルA.S.C.,B.S.C. 編集:メリアン・ブランドンA.C.E./メアリー・ジョー・マーキーA.C.E. プロダクション・デザイナー:スコット・チャンブリス 衣装デザイナー:マイケル・カプラン 音楽:マイケル・ジアッキノ

【ストーリー】
西暦2259年。平和を謳歌する地球に、突如訪れた史上最大の危機。それは、USSエンタープライズのクルーとして乗船していたジョン・ハリソン司令官によってもたらされたものだった。復讐を誓い、たった一人で戦争を仕掛けてきたハリソン。ロンドン、サンフランシスコと急速に広がる地球規模の脅威を前に、若きリーダー、カークは、エンタープライズを率いて、敵が潜む宇宙の戦闘地帯へと旅立つ。地球から宇宙へ、壮大なスケールで繰り広げられる生死を賭けた闘い。仲間との絆は引き裂かれ、愛は試される。ハリソンの過去と復讐の真の目的とは?地球の存亡と引き換えに、カークが、エンタープライズのクルーが払わなければならない犠牲とは?

配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
2013年/アメリカ/132分/シネマスコープ/5.1ch/7.1ch/
(C)2013 Paramount pictures Corporation. All Rights Reserved.

公式サイト http://www.startrek-movie.jp/index.php

スター・トレック [Blu-ray]

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『タイピスト!』

1950年代末のフランスを舞台にしたロマコメの上に「目標!タイプライター早打ち選手権優勝」なスポ根要素をコミカルに乗算して描く。これがなかなか楽しい作品。なによりもまず、作品全体をいろどる50'sな色彩にあふれた美術や衣装、小道具が画面を埋めていて、観ているだけでも楽しい。さらにフランス田舎町の少女が触れる新しい文明というカルチャーギャップ要素と、次第に少女から大人へ成長してゆく姿もきちんと描き込まれていて、かなり充実した111分。監督自身も1950年代の映画が好きなようで、主人公二人の関係が絶妙に変化してゆく距離感の具合など、往年のロマコメを観ている気分にもなる。オープニングタイトルバックも雰囲気があって素晴らしい。監督はこれが長編デビューとなるレジス・ロワンサル。


8月17日 公開
原題:Populaire
監督:レジス・ロワンサル
出演:ロマン・デュリス/デボラ・フランソワ/ベレニス・ベジョ/ショーン・ベンソン/ミュウ=ミュウ
脚本:レジス・ロワンサル/ダニエル・プレスリー&ロマン・コンパン 撮影:ギョーム・シフマン 美術:シルヴィー・オリーヴ 編集:ロール・ガルデット/ソフィー・レンヌ 音楽:ロブ&エマニュエル・ドーランド

【ストーリー】
都会暮らしに憧れて、田舎から出て来たローズは、保険会社経営のルイの秘書に応募。晴れて採用されるも、ドジで不器用なローズは、一週間でクビ確定に。「ただし」と、意外な提案をもちかけるルイ。ローズの唯一の才能<タイプの早打ち>を見抜いたルイは、彼女と組み世界大会で優勝するという野望を抱く。その日からルイのコーチ魂に火が付き、地獄の特訓が始まる。1本指打法から10本指打法への矯正、難解な文学書のタイプ、ピアノレッスン、ジョギング、心理戦の訓練…。めきめきと才能を開花させていくローズ、ところが…。

配給:ギャガ
2012年/フランス/111分
(C) 2012 - copyright : Les Productions du Tresor - France 3 Cinema - France 2 Cinema - Mars Films - Wild Bunch - Panache Productions - La Cie Cinematographique - RTBF (Television belge) (C) Photos - Jair Sfez.

公式サイト http://typist.gaga.ne.jp

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『風立ちぬ』

結論から先に書くならば、好きな作品ではある。でも咀嚼できていないので、機会をみてもう一度観たいと思っている。これまで公開前のレビューや公開後のさまざまな感想や批評をざっと斜めに読んではいたが、なるほど賛否どちらの意見にも納得はできる。ただ原作は読んでいないし原案となった二人のこともまったく知らないので、題材からの切り口は参考に留めている。
それらを踏まえて。多く語られているようにこの作品で描かれる主人公は宮崎駿自身であり、彼の父親でもあるのだろう。戦闘機を作る男の物語を史実に基づいて語る以上は「それが兵器あることや戦争に対する“誠実”な描写が必要」とする意見にも大きく頷くが、一方でそういう作品ではないようにも感じる。
前作『崖の上のポニョ』の時にも書いたのだが、ある時から宮崎駿のなかで“確固たる物語”が崩壊し、語るべきことを見失った期間が長くあったと思っている。作品としては『紅の豚』あたりから徐々に始まって『ハウルの動く城』までの期間が相当する。この頃の作品には明快で盲目に突き進むことのできる物語の動機が薄い。別の言い方をすれば“言い訳”が多い。その代わり周辺のディティールを細かく隙間なく積み上げた物語世界を構築することで物語を進めてきた。そして前作『崖の上のポニョ』で宮崎駿は新たな“物語”を手にした。そこでは宗介とポニョの想いだけを推進力にして一直線に物語が語られていた。彼らの暴走が周囲を世界をどれだけ巻き込もうが構わず、周辺事情の説明さえ放棄して、力いっぱい振り切った物語を語ってみせた。批判も多い作品だったが、個人的にはとても好きな作品でもあった。
そして今作『風立ちぬ』も、その意味では『崖の上のポニョ』の延長線上にあるのではないだろうか。主人公が分別のつかない子どもではないから、物語を進める力のベクトルが無鉄砲に外側に出ていかないだけで、主人公が抱える想いと夢想と愛情を推進力にした明快で盲目な物語であることに変わりはない。それ故に厄介でもあるのだが。そんな一人称の盲目な物語に、第三者的な戦争への“誠実”を明確に織り込む余地はないのではないか。
もはや宮崎駿の作り出す世界は、『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』のような世界に正面から対峙する強い物語を持つエンターテイメントでもなければ、『千と千尋の神隠し』のような隅々までディティールを楽しむことのできるエンターテイメントでもない、個人の想いの物語だ。それはどこか晩年の黒澤明にも似ているように思える。映画表現に対して誠実で偏屈で頑固な、でも同時に誰よりも力強い想いを抱きつづけているジジイのあふれ出た夢の形骸なのだろう。


7月20日 公開
監督・原作・脚本:宮崎駿
出演:庵野秀明/瀧本美織/西島秀俊/西村雅彦/スティーブン・アルパート/風間杜夫/竹下景子/志田未来/國村隼/大竹しのぶ/野村萬斎
作画監督高坂希太郎 動画検査:舘野仁美 美術監督武重洋二 色彩設計保田道世 撮影監督:奥井敦 音響演出・整音:笠松広司 アフレコ演出:木村絵理子 編集:瀬山武司 音楽:久石譲 主題歌:「ひこうき雲荒井由実

【ストーリー】
かつて、日本で戦争があった。大正から昭和へ、1920年代の日本は、不景気と貧乏、病気、そして大震災と、まことに生きるのに辛い時代だった。そして、日本は戦争へ突入していった。当時の若者たちは、そんな時代をどう生きたのか?イタリアのカプローニへの時空を超えた尊敬と友情、後に神話と化した零戦の誕生、薄幸の少女菜穂子との出会いと別れ。この映画は、実在の人物、堀越二郎の半生を描く。

配給:東宝
2013年/日本/126分/カラー/ビスタサイズ/モノラル
(C)2013 二馬力・GNDHDDTK

公式サイト http://kazetachinu.jp


風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)

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『モンスターズ・ユニバーシティ』

モンスターズ・インク』の劇場用長編2作目は昨今流行りの前日譚で、主人公たちの大学生活を描く。しかも物語はサリーではなくマイクを中心にして展開してゆく。これがなかなかビターな物語になっていて驚く。“こわがらせ屋”になることを夢見るマイクは、勉強はできるのに適性がない。つまり“こわく”ない。果たして前作で分かるようにマイクは“一人前”のこわがらせ屋になることはできない。彼の夢は叶わないのだ。そんな渋い物語を中心に置きながらも、そこはピクサーなのでA級のエンターテイメント作品として物語ってみせる。近年のピクサー作品に垣間見える、『トイ・ストーリー3』を頂点とした“夢/理想”と“現実”とのシビアな距離の明示というテーマの中では、この『モンスターズ・ユニバーシティ』が提示する“答え”は真っ当というか、誠実な着地のさせ方だと感じた。


7月6日 公開
原題:MONSTERS UNIVERSITY
監督:ダン・スキャンロン
出演:ビリー・クリスタル/ジョン・グッドマン/スティーブ・ブシェーミ/ヘレン・ミレン/ピーター・ソーン/ ジョエル・マーレイ/ショーン・P・ヘイズ/デイブ・フォーリー/チャーリー・デイ/アルフレッド・モリーナ/ジュリア・スウィーニー/ネイサン・フィリオン
日本語吹替:田中裕二/石塚英彦/柳原可奈子
脚本:ロバート・L・ベアード/ダニエル・ガーソン/ダン・スキャンロン 音楽:ランディ・ニューマン

【ストーリー】
幼い頃から“怖がらせ屋”になることを夢見るマイクは、努力して超難関のモンスターズ・ユニバーシティに入学する。そこにはサリーをはじめ、才能あふれる未来の“怖がらせ屋”たちが大勢いたが、マイクには体が小さく“かわいすぎる”という致命的な欠点が…。怖くないために学部を追放された彼は、起死回生の“ある作戦”を思いつくが、その一途な思いはモンスター界のタブーを破り、史上最悪の事件を巻き起こすことになる…。
同時上映『ブルー・アンフレラ』

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2013年/アメリカ/110分
(C)2013 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

公式サイト http://www.disney.co.jp/monsters-university/home.html


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『そして父になる』(9/28公開)

ここ数年の是枝裕和作品はどれも好きだが、この作品は別格か。設定と同じ年の子供がいることも物語への思い入れを深める。役者陣も良いし、スチル出身のCMカメラマンによる撮影も好みだった。公開されたらもう一度観る。
http://soshitechichininaru.gaga.ne.jp

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『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(8/23公開)

面倒くさそうでシリーズは観たことがなく、リブートされた前作のみ鑑賞して観た今作。楽しかった。きっとシリーズのファンにはいろいろと感極まるところもあると思われる。腑に落ちないところもあるけれど、娯楽作として良し。
http://www.startrek-movie.jp/index.php

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『SHORT PEACE』

大友克洋の新作短編『火要鎮(ひのようじん)』が最大の注目となる“日本”をテーマに据えたオムニバス作品。どれも楽しかったが、白眉はやはり『火要鎮』か。絵巻物のイメージによる疑似ワンカットな冒頭に「またこういう手法なのか」と、ややテンションの下がったのだが、そこから展開される一大スペクタクルに目が離せなくなった。おそらく今回の4篇のなかで作品時間がいちばん短い『火要鎮』だが、物語とその映像表現における濃度は他の作品を凌駕している。とはいえ他の作品もそれぞれ充分に堪能できるだけの楽しさに満ちている。なかでも『GAMBO』の禍々しさはかなり好き。今更ながらに、でも改めてアニメーションの作品世界の具現化においてCGが広げてみせた振り幅の大きさと深さに感嘆する。


7月20日 公開
監督:大友克洋/森田修平/安藤裕章/カトキハジメ/森本晃司
出演:早見沙織/森田成一/山寺宏一/悠木碧/草尾毅/田村睦心/浪川大輔/二又一成/檀臣幸/牛山茂/大塚明夫/置鮎龍太郎/春名風花

【ストーリー】
『九十九』嵐の夜に深い山中で男が迷い込んだ祠に現れたのは、捨てられた物に憑いたモノノケたちだった。『火要鎮』惹かれあいながらも結ばれぬ商家の娘と幼馴染の男。娘の情念は大火事を引き起こし江戸の町を焼き尽くす。『GAMBO』戦国時代末期。村に鬼が現れ略奪の限りを尽くす。少女は出会った白い熊に救いを求め、鬼と白熊との激闘がはじまる。『武器よさらば』砂漠の中の廃墟と化した東京。武装小隊は一台の戦車無人兵器と遭遇戦となり、小隊は窮地に陥っていく。

配給:松竹
2013年/日本/68分
(C)SHORT PEACE COMMITTEE (C)KATSUHIRO OTOMO/MASH・ROOM/SHORT PEACE COMMITTEE

公式サイト http://shortpeace-movie.com

ミニパラ http://www.minipara.com/movies2013-2nd/shortpeace/

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